生前贈与


生前贈与

贈与とは、民法に「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」(民法549条)と規定されており、個人から個人に財産を無償で与える契約です。

贈与税は、暦年(1月1日から12月31日まで)の間に取得した贈与財産の合計額について課税されます。

贈与には大きく分けて、暦年贈与と相続時精算課税の二種類があります。

暦年贈与

生前に財産を贈与すれば、その分だけ被相続人の財産が減るため、相続税を節税できます。
ただし、贈与には贈与税がかかりますので、贈与税と相続税を比較し想定される相続税率より低い贈与税率で贈与することが節税の分岐点になります。

贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に適用される税率を掛けて算出します。したがって、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません。

なお、贈与税の税率は、以下のとおりです。

贈与税の速算表

<一般贈与財産用>(一般税率)

この速算表は、「特例贈与財産用」に該当しない場合の贈与税の計算に使用します。
例えば、兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合などに使用します。

基礎控除後の
課税価格
税率控除額
200万円以下10%-
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1,000万円以下40%125万円
1,500万円以下45%175万円
3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円

<特例贈与財産用>(特例税率)

この速算表は、贈与により財産を取得した者(贈与を受けた年の1月1日において18歳の者に限ります。)が、直系尊属(父母や祖父母など)から贈与により取得した財産に係る贈与税の計算に使用します。

例えば、祖父から孫への贈与、父から子への贈与などに使用します(夫の父からの贈与等には使用できません。)。

基礎控除後の
課税価格
税率控除額
200万円以下10%-
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,00万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

被相続人から相続などによって財産を取得した人が、加算対象期間内に被相続人から贈与を受けた財産は、相続税の課税対象となります。この場合、相続開始の時の価額ではなく、贈与の時の価額を相続税の課税価格に加算します。

(注) 加算対象期間とは、相続税の課税価格に加算される暦年課税に係る贈与の対象期間をいいます。令和6年1月1日以後の暦年課税に係る贈与により取得した財産については、その加算対象期間が相続開始前7年以内となります。具体的な被相続人の相続開始日に応じた加算対象期間は、次の表のとおりです。

被相続人の相続開始日加算対象期間
~令和8年12月31日相続開始前3年以内(死亡の日からさかのぼって3年前の日から死亡の日までの間)
令和9年1月1日~令和12年12月31日令和6年1月1日から死亡の日までの間
令和13年1月1日~相続開始前7年以内(死亡の日からさかのぼって7年前の日から死亡の日までの間)

No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)(国税庁HP)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm

相続時精算課税

相続時精算課税制度とは

相続時精算課税の制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。

この制度は贈与者(父母または祖父母など)ごとに選択できますが、一度選択すると、その選択に係る贈与者(「特定贈与者」といいます。)から贈与を受ける財産(「相続時精算課税適用財産」といいます。)については、その選択をした年分以降は、すべてこの制度が適用され、「暦年課税(注)」へ変更することはできません。

贈与税額の計算

相続時精算課税制度における贈与税額の計算は特定贈与者ごとに以下のとおりとなります。

贈与税額の計算

※令和5年税制改正より、2,500万円までの非課税限度額に加え、毎年110万円までの基礎控除が創設されました。

相続税額の計算

相続時精算課税を選択した受贈者に係る相続税額は、特定贈与者が亡くなった時に、それまでに贈与を受けた相続時精算課税適用財産の価額と相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。
その際、相続税額から控除しきれない相続時精算課税に係る贈与税相当額については、相続税の申告をすることにより還付を受けることができます。

・相続税の計算上の加算額

①令和5年以前に贈与を受けた財産
 相続時精算課税適用財産の贈与時の価額の合計額

②令和6年以降に贈与を受けた場合
 贈与を受けた年分ごとに以下の算式により計算した残額を加算する。
 相続時精算課税適用財産の贈与時の価額の合計額-基礎控除額(110万円)

■ポイント
①令和5年税制改正により、相続時精算課税制度を選択した場合には、110万円以下の贈与については
贈与時は非課税となり、また、相続時は相続財産に加算されないことになりました。
よって、110万円以下の贈与については、暦年課税よりも、相続時精算課税を選択する方が有利になります。

直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等の対価に充てるための金銭を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります。

受贈者ごとの非課税限度額

贈与の時期/住宅用の家屋の種類令和6年1月1日から
令和8年12月31日まで
省エネ等住宅1,000万円
上記以外の住宅500万円

(注)「省エネ等住宅」とは家屋の区分に応じ、次の表の省エネルギー性能、耐震性能またはバリアフリー性能のいずれかの基準(省エネ等基準)に適合する住宅用の家屋であることにつき、住宅性能証明書など一定の書類を贈与税の申告書に添付することにより証明されたものをいいます。

なお、この特例を受ける場合には、上記のほかにも留意点があります。
詳細は、当事務所の無料相談をご利用ください。

夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除

夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除

婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できます。

  1. 特例を受けるための適用要件
    (1)夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと。
    (2)配偶者から贈与された財産が、自分が住むための国内の居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること。
    (3)贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること。

(注)配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。

なお、適用を受けるためには、必要な書類を添付して贈与税の申告をすることが必要です。